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「知」の落ちこぼれーー山口昌男山脈

無用亭(山口昌男)編『山口昌男山脈 古稀記念文集』(私家版 限定500部)に収録。存在は知っていたが、古書検索してもまったく出てこなかった。ようやくオークションで入手。内田魯庵山口昌男を重ね合わせた人物スケッチ。

 とすれば、この本の中で、そして現実の東京の町中で、風のような速度で走り回りながら花々の花粉を媒介しているのはヘルメス的人間なのだ。内田魯庵はもとより、山口昌男その人が、ヘルメスのように夜の闇にまぎれて、無価値を価値に、醜悪を快楽に、錫杖の一閃によって変える。さてこそ、毎度見慣れた光景ながら、スリリングにもいかがわしい山口流魔術に、平成のヒマ人はこの度も堪能するのである。



私以外にも「知」の世界で脱落し失業しても、身体を使う職人に転業して生きていけそうな男が、すくなくとも今の日本にもう一人はいる。友人の人、山口昌男はこういうときにこそつきあってくれる人だ、とかねて思ってはいたが、それがその通りになりそうだとは、うれしい。たのもしい。